9 海外調達で失敗を繰り返さないために その2

2 マーケティングの精度を上げ、標準化を図る

イグレン 加藤 文男

 海外調達をすると安く購入できると聞いて商談を始めたが「思ったより安くならない」とか「他社ではどのようにしているのだろうか」ということがよくあります。当然のことですが、見積価格は、仕様書や原材料の性能や規格も重要ですが提示する調達数量(ロットの大きさなど)で決まります。

欧米の企業では、原材料や部品、OEM製品も発注する数量が非常に大きいのが普通です。欧米の企業では、全世界の市場を相手にマーケティングがきっちりしており、各地域別、国別など1年間に販売する数量が明確でそれに使用する原材料や部品を標準化し、発注数量を正確に予測します。発注数量は、年間数十万個から多い場合には、百万単位で発注することは珍しくありません。その代わり、調達条件は厳しくなり、非常に安い価格を要求してきます。調達数量や価格を契約し、最初に契約した調達数量は必ず守ります。もし、事前に計画が変更になり、最終的に購入数量の変更があれば話し合いで調整し、対応します。これが欧米式の原材料、部品および製品の調達システムであり、海外の調達先はこのことをよく知っています。

国内調達では、思い切った数量の多い調達は少ないのです。原因は営業部門の販売の考え方の違いにあるようです。国内の営業担当者は、製品の発売開始時期からの販売数量を観察しながら、販売計画を徐々に挙げていく傾向があります。従って、最初から思い切った数量を発注しないのです。日本の大手企業は、米国向け、欧州向け、東南アジア向けなど仕向け地別に仕様が異なり、結果として原材料や部品の単位たりの調達数量(発注数量)が小さくなるのです。仕向け地別にきめの細かい対応をする日本企業の良さがその原因ですが営業担当者のマーケティングの精度の悪さや販売数量に慎重であることも影響しています。

このような国内調達の慣習に慣れてきた資材部門は、海外調達においても最初から大きな数量を条件にしない傾向があります。国内の取引先は、発注先の状況をこのような背景を良く理解しており、原材料の見積価格を計算し、提示して対応してきました。発注者と取引先の間には経験的に信頼関係があり、大きく裏切られることなく、その原材料を使用する製品の最終的な販売数量を何とか達成して、原材料部品の販売利益を確保できる結果となっていたのです。

このような日本的な特殊な慣習が原因で、海外調達では欧米企業に比較して、想定より高価な原材料部品や製品を購入する結果になっていたのです。これは台湾の部品製造業の社長さんから聞いた話です。タイでも同じような話がありました。

 海外調達では、営業担当者の商品企画や販売計画を担当するマーケティングの精度を上げ、標準化を図り、少しでも発注数量を大きくする工夫が必要です。
これは簡単ではありません。全社的な意識改革が必要です。

掲載日:2016/04/27

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