7 海外調達と国内調達は何が違うのか その7

外国為替の変動で調達価格が変動します

イグレン 加藤 文男

 海外調達においては、価格の多くはUSドルで決められます。USドルと日本円の関係は常に変動しています。従って、契約で決めた筈の価格ですが実際に日本国内で支払う場合に、発注者の最初の思惑とは別に変ってしまうことがあるのです。

海外調達の主要な原因は円高でした。1985年以降さらに円高になり、円高の傾向があまりにも長く継続するので海外調達が進みました。2012年当時に色々検討した結果、国内仕入価格¥110の部品の海外の調達先を見つけ、国内調達を海外調達に切り替えたと仮定して考えてみましょう。

この時の海外調達価格は、US$1(1ドル)丁度で契約できました。当時の為替レートは、1ドルにつき¥90でしたので1個につき、¥90で購入できたことになります。国内調達を海外調達に切り替えてことで¥20安く購入できたことになります。しばらくの間円高のまま推移し、同じ価格¥90で購入できました。この部品の海外調達はうまくいったと思っていました。

ところが、昨年2015年10月から11月にかけて外国為替が1ドル¥120の円安傾向になりました。契約は、従来通りでUS1ドルですから、日本国内での支払いは¥120になってしまったのです。2012年当時国内調達より¥20安く調達できていたのですが2015年以降¥120支払うことになってしまったのです。もし、国内調達価格が¥110を継続できたとすると海外調達では¥10高くなってしまう計算になります。「これでは大変!」と海外調達に切り替えた部品を国内調達に戻した方がよさそうだと考えるようになります。これが昨年に新聞で話題になった海外調達の「国内回帰」です。
つい最近、2016年4月外国為替が1ドル¥110と少しに円高傾向に変動しています。この状況が継続すれば、国内調達価格と変わりなく購入できそうです。海外調達担当者もほっとしているところでしょう。

このように外国為替の変動により、海外調達に切り替えてコストダウンできたつもりがかえって国内調達のほうが安くなってしまうということが起こります。外国為替が変動する際には、実際に国内で購入できる価格を常にチェックする必要があるのです。

これがUSドル建てで海外調達した際に外国為替の変動で起きることです。
最初から、円建てで海外調達をした場合は、外国為替の変動の影響はないので¥110で継続して購入できます。
海外調達では、外国為替の変動に注意が必要なのです。

注意:この事例では、外国為替に着目し、諸経費などは無視して単純に計算しています。

掲載日:2016/04/09

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