3 海外調達は国内調達と何が違うのか その3

注文書は重要な契約書。安易な変更は信用を落とします。

イグレン 加藤 文男

 (1)注文書が届いて動き出す海外調達
海外調達は契約で始まります。注文書は、契約書の一部です。国内調達担当者が毎日出している注文書は、「契約」という意識は持っていないかもしれないが契約書です。
海外調達では、注文書が届かないと正式の注文とはみなさず、仕事を進めてくれないのが普通です。
海外企業を訪問し、注文条件や仕様の打ち合わせをして「発注する」という結論を出して安心して帰国します。ある期間を経てその後の進行状況を確認して、国内企業のような動きなないために驚くことがあります。国内調達では、調達説明会を開催し、結論を出し、議事録を作成すれば、注文は来るものとして、問題点の検討など具体的に進めてくれるのが普通です。しかし、海外調達では、会議を開いて打ち合わせをしただけでは進めてくれるとは限りません。注文書が届いてはじめて正式に確認できるのです。当方は、発注の結論を出したつもりでも注文書が届かなければ、海外企業はリスクをとって対応はしないのです。

(2)注文書の条件変更は許されない海外調達
国内調達では、毎年生産販売計画に基づき原材料調達に関する説明をし、打ち合わせをします。当初、生産数量も大きい計画でした。しかし、実際の発注段階で数量が変わることがあります。営業担当者が過剰在庫を恐れて販売計画を修正したためです。日本企業は、マーケティングの日々が原因でこのような生産数量の変更(減少)が結構あったのです。その後販売も順調に伸び、注文数量も当初の計画を超えるのです。新製品開発に使用する原材料の調達においても、国内の下請け企業はこの種の変更に慣れており販売が軌道に乗れば、数量も増えるだろうと大目に見てくれて大変協力的であったのです。
海外調達ではこれは通りません。生産ロットの大きさや毎月の生産数量と納期、支払い方法などどの条件も製造業にとって利益にも大きく影響します。当初の打ち合わせと注文書の記載内容が当初と大きく違えば、価格の変更を要求されます。海外調達では、注文書は大切な契約書であり、打ち合わせた価格と数量は利益を確保するための大変重要な条件なのです。
海外調達では、国内調達にある信頼関係もないので、徐々に注文が増えるだろうとは考えてくれません。安易な変更は海外調達では大きく信用を落とし、相手にされなくなります。次の海外調達の交渉にも大きく影響します。

国内調達では、新製品の説明会や打ち合わせが実施されれば、間違いなく注文書が届くという暗黙の了解があり、他社へ発注されることはないので安心して仕事が進められました。日本で比較的短期間に新製品が開発された背景には、このような親企業と下請企業の間に暗黙の了解や「阿吽の呼吸」で協力する特殊な強い関係があったのです。
海外調達とは大きな違いです。

掲載日:2016/04/05

コメントを送信する

* が付いている欄は必須項目です