26 安心できる取引先を選ぶポイント3  

工場内の管理

イグレン 加藤 文男

5 工場内の管理
 経営者の面談の次は、工場内の管理状況の確認である。基本は、5Sが徹底されているかどうかを確認する。5Sは工場内の状況を観察することでも判断できる。資材購買担当者は、工場を訪問した際に直ちに5Sの実践状況を判断できるように観察眼を養いたい。社長が5Sを重視しており、標語などが工場内に掲示されていることでもわかる。中規模以上の製造業では従業員に方針や考え方を徹底しようとすればいつでも見ることができるように掲示をしているのが普通である。しかし、人数が少ない零細企業では掲示のスペースが少なく掲示しないこともある。
 次に製造する工程の順番に観察するポイントを挙げておく。
(1)受入検査工程
 使用する原材料の検収部門や受入検査部門を観察する。すべてのものを受入検査することは時間的に無理であり、また必要でもない。受入検査の必要な原材料が明確になっており、受入検査に必要な仕様書、図面、検査基準、限度見本及び検査データの整理保管状況を確認したい。検査対象の原材料を丁寧に扱うことを見ておきたい。担当者の計測器や治工具の取り扱い方を確認する。計測器は定期的に校正されているかを確認する。
検査後の良品と不良品の区別の表示および不良品の処置方法も確かめておきたい。
(2)製造工程
 
作業者が実際に作業する周辺の環境を観察する。工場内に古くなってほこりをかぶった機械設備などが放置されていることがある。作業指図書は常に新しいものに改訂はされているかを確認する。また、作業者の周辺に不要なものが多いことは管理状態にないことを示している。工程不良の発生原因になる。正しい治工具の仕様や作業者の部品や製品の取り扱い方もよく観察する。扱い方が乱暴で外観にキズをつけている場合もある。
(3)工程検査
 工程検査で注意すべき点が適切に指示されており、検査基準が明確になっていることがポイントである。検査担当者が毎日曜に変わっていては安定した品質の維持は難しい。工程で使用されている計測器の校正状況も確認する。また、工程内で発見された不良品の処置方法の確認は重要である。
(4)出荷検査
外観検査には限度見本が使用される。限度見本の使い方は正しいか、検査データの管理はなされているかを見ておきたい。計測器の校正状況や検査担当者の教育の実施状況を確認する。出荷検査で発見された不良品や異常に対する処理方法が明確になっているか、検査結果のフィードバック及び不良対策報告書の管理も確認する。
完成品に対する外部からの苦情に対する出荷検査担当者への伝達とフィードバックが徹底されて入りことも重要である。不良対策報告の管理も見ておきたい。
検査済品、未検査品の区分、ロットアウト品への表示、検査で発見された不良品への表示および処理方法の実態を確認する。

6 在庫管理状況
(1)材料在庫
製造に使用する原材料の管理倉庫の保管状況も確認する。整理、整頓の5Sの徹底と  数量管理がし易くなっていることがポイントである。入出庫管理では先入れ先出しが実施しやすい保管方法を確認する。重量の大きな材料費では先入れ、先出の徹底がおろそかになりやすい。長期間保存している滞留品の管理は保管期限もチェックする。IC、LSIなどの電気部品にも賞味期限がある。長期間保管すると劣化する部品があり定期的に検査の必要なものがあることも知っておきたい。原材料、部品も毎月棚卸が実施されていることも作業に質問して確認したい。
(2)製品在庫
材料倉庫と同様な管理と共に大型製品、重量の大きな製品は、積段数(積み荷として重ねる段数)にも制限がある。製品の先入れ、先出しはもちろんであるが担当者の入庫や出庫の際の荷扱い状況も確認する。長期間の滞留品は、その保管期間に注意が必要である。また、出荷先から販売できずに返却された製品は、不良品が混在していることが多い。開梱された形跡がない場合も再検査で品質を確認したい。
以上が工場の観察ポイントである。

海外の工場の管理で甘くできない点である。工場内の管理を甘くすると不良品が混入する。特に市場からの不良返品は手が加えられていて不良原因を正しく分析できない。原材料や製品を丁寧に扱うことは製造工程における基本である。
製造工程管理と異なるが会社内のトイレの美しさ(清掃管理)はその企業の品質の判断基準になる。ショウルームなど顧客の使用するトイレを清潔にしておくことは当然であるが作業者の使用する工場内のトイレまで配慮されない工場が多い。きっちりした会社では従業員用のトイレにも注意を払っている。

掲載日:2017/01/31

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