49 調達購買担当者に要求される知識と能力 2

製品の製造で要求される共通的な知識

イグレン 加藤 文男

 1 問題を解決するための知識
調達した原材料は、製造する製品、商品の品質だけでなく、製造コストに大きな影響を与えます。問題の発生時には、取引先の品質問題を理解し、できるだけ早く相談に乗り、問題解決しなければなりません。一定の品質を維持確保するために品質管理体制、品質保証体制の確立に関する知識が必要です。社内に品質管理、品質保証部門のある場合には、初心者は専門担当者の支援を受けて解決しましょう。しかし、現状を正しく伝えるために調達担当者にも品質管理、品質保証体制の構築に関する基本的な知識が必要です。特性要因図、ヒストグラム、パレート図などの簡単なQC手法は、できるだけ早く覚えましょう。簡単なQC手法については、本コラムのNo.18 及びNo.19で説明しています。

2 改善やコストダウンに必要な知識
資材購買の初心者にとって5Sやムダの排除は、改善やコストダウンの基本的な知識です。日本の企業にとってごく当たり前の知識ですが十分徹底されていない企業が多いのです。
(1)5S(整理、整頓、清潔、清掃、躾)
5Sは品質管理・品質保証だけでなく、経営基本です。製造工程において5Sを徹底するだけでコストダウンに結びつきます。日本の企業では、海外に工場を建設し、製造を開始する前に必ず従業員に5Sの教育から始めます。日本の企業にとって5Sはごく当たり前の知識になっています。しかし、国内の中小企業には社長をはじめとして従業員も自社では十分徹底していると勘違いしているために5Sのレベルが低い企業が多いのです。
5Sについては、No.17にて説明しています。参照してください。
(2)ムダの排除
ムダを無くすことは、コストダウンの基本です。自社の製造工程では、ムダなど無いと思い込んでいる企業が多のです。ムダの排除については、No.20において説明しました。参照してください。

3 VA/VE手法
コストを下げる方法としてVA(価値分析)とVE(価値工学)があります。
VAは、対象とする部品などを前にして、機能中心の考え方で、工学的知識とアイデアで、原材料、部品の価値を分析し、設計、品質の改善をおこなっていくことです。
必要な機能を最低限の原価で得るために、その機能と原価のバランスを研究して、設計や材料の仕様の変更すること、製造方法を変更すること、供給先を変更 することなどがあげられますが社内外の知識を総合して組織的に永続的に行う活動です。
VAもVEも専門的な知識が要求され、多くの企業ではそのために専門の技術者を置いています。資材購買の初心者として、専門技術者の知識を借りることが必要です。
同じ部品で価値を上げるには機能を向上させるか原価を下げる必要があります。コストダウンは、安くていいものを作ることです。材料や部品などの資材を購入する場合、材料や形状がそのままでは、仕入先でのコスト削減は難しいものです。また、材料の節約や作業時の短縮などの労力の節減では限界があります。専門家にお願いすることがベストですが資材購買初心者ができるVA/VEの考え方を下記しておきます。

(1)機能や品質を落とさずによりコスト削減をおこなう方法
・ 設計や材料の仕様の変更
・ 材料、形状の変更
・ 製造方法の変更
(2)VA・VEを進めるステップ
① 品物の選択 対象とする品物をきめる
② 機能の研究 その品物に要求される機能を考える
③ コストの調査 それはいくらかかっているか
④ 代品の探求 他に代替品がないか
⑤ コストの比較 あるとすればいくらか
(3)本当に価値があるかどうかの確認の具体的な方法
資材購買の初心者として、次のような具体的な価値確認の方法をもっておきたいものです。
・ この部品は除けないか。 不要に出来ないか。
・ 機能の連合、分割はできないか。
・ 機構、形は変えられないか。
・ 代替材、代用品はないか。
・ 市販品、標準品は使えないか。
・ 公差はゆるくできないか。
・ 生産方法は変えられないか。
・ 新しい加工法はないか。
・ 工程数は減らせないか。
・ 不用作業はないか。
・ 作業を複合または簡単にできないか。
・ もっと安く買う方法はないか。
・ 新製品、新材料が出たことを知っているか。
・ 検査は無くせないか。
・ 供給仕入先は適正か。
・ 調達のやり方を変えられないか。
・ 他社の製品を研究したか。

掲載日:2016/02/22