55 調達担当者への誘惑と圧力

日常の会話で情報収集し、誘惑には会社のルールで判断

イグレン 加藤 文男

 大きな企業や中堅企業の資材購買窓口には、「何とか取引企業の一つに加えて欲しい」とか、「少しでも購入して欲しい」という営業担当者が面会を求めてきます。大企業と取引した実績ができれば、会社のパンフレットに記載することができます。大企業に取引口座を持っていることがその会社の信用度を判断する材料の一つに考えられるからです。

 資材購買を担当者には各種の誘惑があります。お盆や年末には、お中元やお歳暮が贈られてくることがあります。また、飲食などに誘われることがあります。これを担当者の「役得」などと考えてはいけません。その価値・金額の大小の問題ではありません。飲食の誘いや贈り物は「取引をやめないで欲しい」という気持ちや「価格交渉で少し手心を加えて欲しい」という要求が含まれているのが普通だからです。

 昔は、大手企業の購買責任の社宅では年末に床の間にたくさんの贈答品を自慢げに積み上げていた話を聞いたことがあります。私が購買部門への異動を聞いて親戚の長老が「これで君も家が建つな」といわれたことをこの掲載の最初に書きましたが昔はこのようなことがあったようです。

  飲食の誘いや贈り物は一度受けてしまうとだんだん高価な贈り物となり、深みにはまり、価格交渉の際に弱腰になって手心を加えてしまうことに結びつきます。例えば、品質や価格など良い条件の取引先が見つかってもそこへ変更することに躊躇することになります。資材購買の初心者には、このようなことが少ないのですが調達先を決定する権限が大きくなるに従って、このような誘惑の機会が多くなります。

 資材購買担当者にとって、取引先の経営状況や組織変更の情報入手や原材料の入手状況の把握など現況を把握することも業務の一部です。入手し難い原材料を緊急に短納期で調達することもあり、取引先の担当者と無理の聞いてもらえるよい関係を保つことも大切なことです。しかし、贈り物や飲食の接待を受けることで正しい交渉ができないような関係になっては困ります。すべての飲食などの提供を受けることを否定するつもりはありませんが自分を律することを十分わきまえておくことです。原材料の入手状況の情報入手や人間関係・信頼関係の構築はできるだけ日常の会話の中で収集できるようすることが大切です。

 お歳暮やお中元など一方的に送付されるものについては、送付された際に業者にお断りすることです。会社によっては、受け取った贈答品は、上司などを通して送り返すことを実施することを規定で定めている場合もあります。それぞれの会社で贈り物や食事の接待に関する基準が決められているはずです。取引先との良い関係の構築や必要な情報の収集は、日常の電話や会話の中で行い、けじめのある言動が要求されます。

 調達担当者へは、時には誘惑や圧力があります。誘惑や圧力に負けないために適正な方法で情報収集を行い、信頼関係の構築に務めたいものです。

掲載日:2016/03/15

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