54 営業に上手に対応する資材購買になるために 2

理論武装と交渉相手の研究

イグレン 加藤 文男

 前回述べたように資材購買担当者は、少しでも多くの原材料を少しでも高く売ろうと考えている営業担当者と交渉します。交渉は一方的に強引に当方の意見を通すことではありません。そのようなことでは次回から話も聞いてもらえなくなります。前に述べた(No3参照)近江商人の「三方よし」の精神で交渉しないと長く付き合っていただけなくなります。交渉相手に関して十分研究し、注意して収集した情報を基に理論武装をし、当方で話すべきことは話をして、お互いに納得した上で商売に結びけることです。
後日後悔しない話し合いにしたいものです。

1 理論武装
交渉に当たって、その場で考えても何とかなるだろうという態度は最もよくないのです。相手と会ってから考えるのでは遅いのです。交渉の基本的なことが身につくまでは、常にじっくり考えて準備をすることはすでに述べたとおりです。交渉について研究する意欲のない資材購買担当者に交渉は任せられません。
論理的武装とは、考え方に隙間がないことです。自分と異なる立場にある相手による批判に対して防衛力があることです。最近いろいろなところでディベートが指導されるようになってきました。ある考え方に対して賛成の立場と反対の立場で理論を組み立て、それぞれ相手を論破しようというゲーム的な考え方で討議します。論理的武装の良い訓練になります。当方の考え方を「言わずともわかって欲しい」という以心伝心という考え方の逆の考え方です。腹芸とか曖昧さが得意といわれる日本人は、論理的思考に弱いと考えられていますのでディベートを通して論理的な武装をいつでもできるように訓練したいものです。
論理的思考を訓練して、「腹芸」や「曖昧さ」を利点に自分自身を鍛え上げることがベストです。資材調達担当者もこの能力を身につけ、営業担当者に上手に対応し、始めに準備した目標を達成できるようにしたいものです。

2 交渉準備のポイント
交渉に関して準備することを整理しておきます。
(1)入手した情報を整理する
原材料、燃料・エネルギー、人件費、輸送費、技術的見地(改善できないか)、設備、購入数量、他社価格、他社の品質などについて整理し、分析をします。
(2)情報を組み立て、結論を出します。
適切な結論は何か。ここでは当社としての原材料の調達価格になります。
(3)相手の反論を考える
当方の要求に対しては必ず反論があると考えて良いでしょう。反論がなければ当方の準備不足(検討ガ甘い)も考えられます。当方の結論の弱みを検討し、それに対する反論を考えます。想定される反論をできるだけ多くあげてこれに準備をします。
(4)「落としどころ」の準備
たくさんある相手の反論の中で妥当で受け入れる必要があることも出てきます。素直に聞く態度も重要です。相手に反論され、論破できなかった場合の「落としどころ」を準備しておきます。

3 交渉相手の研究
交渉に当たっては、その相手について良く知ること大切です。デパートでも、数量をまとめて買えば、安くする交渉ができるといわれます。交渉権限のある相手を見つけることです。売り場にいる店員ではなく主任とか係長と交渉できるようにすることです。売り場の店員には安くする権限が与えられていないことが多いと聞きます。
我々は、資材購買担当者は、デパート品物を買うのではありませんが考え方は同じです。交渉相手も研究しなければなりません。交渉の相手が「どれくらいの権限を持っているか」「値引きする権限が与えられているか」を正しく知ることです。逆に当方も顧客としての意味は(本当のお客か)「たくさん買ってくれる客か」「将来も買ってくれる可能性がある」ことを相手から評価され、判断されています。
こちらも買う立場で権限を持って交渉できるかどうかが問われていることを自覚する必要があります。

4 交渉の心構え
交渉の成立までにある程度の時間を要します。交渉の時間には余裕を持って望みましょう。時間が十分ないと当方に焦りが出ます。決してあせってはいけません。また、言葉などで 感情的になってはいけません。その上「何とか説得してやろう」として「戦闘的な言葉使いや態度」にならないように十分配慮しましょう。
交渉中は、相手が内容を理解したかどうかの確認が必要です。相手の態度や言葉使い、イントネーション、顔色などで判断できるようにしたいものです。相手の言葉の内容を正しく理解すと共に時には裏にある意味を読むことも必要になることがあります。

 資材購買担当者もできるだけ経験を積み、1日も速くこのレベルに能力を高めたいものです。

掲載日:2016/03/14

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