40 取引先管理(外注管理)2

取引先の定期的評価と建設的な提案で良い関係の構築を

イグレン 加藤 文男

 入手した取引先に関する情報は、定期的に整理分析して、評価をします。資材購買は、「適正な価格で」「必要な数量を」「適切な納期に」購入することが本来の使命ですから、整理分析と評価に時間をかけてはいけません。そのためには、日ごろから収集すべき情報を絞り込み、情報を入手したら直ぐに記録できるように準備をしておかなければなりません。後でまとめて記録しようと思っても、忘れたり、正確さをなくす場合もあります。予定した情報を入手したら直ぐに記録する習慣をつけます。毎日コツコツと情報を記録することが大切です。これらの日々の記録が交渉の貴重な材料として生きてきます。

(1)Q、C、Dによる取引先の定期的総合評価
現在取引している企業の品質、コスト、納期に関して常に評価することは、将来の取引の継続上重要です。日常取引において、品質、コスト、納期について項目を明確にし、定期的に公平、率直な評価を行ないます。評価の結果より、現在の取引先の課題を明確にし、問題点に対して必要な改善提案を率直に行う関係を構築したいものです。
しかし、取引先を評価しても改善の提案や提言は、取引先との取引金額や力関係で必ずしも聞いてもらえるとは限りません。取引金額が小さく、力関係が小さい場合には、取引先にこだわらず、新しい取引先を開拓する必要があります。総合評価は上手に使用したいものです。
① 適切な評価基準の作成
評価基準には、絶対的な基準を作成することは困難です。ここではある企業の評価基準の事例を挙げておきます。自社に適した評価基準を作成しましょう。

 A評価 今後とも主要な取引先として継続する企業
新製品開発情報など積極的に提供し、品質、コスト、納期について協力をもとめてゆく取
引先
B評価 今後とも、引き続き取引を継続する企業
    調達、購買担当者が企業の動向を判断し、A評価に向上を促してゆく取引先
C評価 今後取引を縮小する企業
  開発購買担当に新規取引先を開発依頼する業種と取引先
その他 常に取引がないので評価をしない取引先

  * 評価方法については、A、B、C評価の他に5点満点法、10点満点法など工夫します。
② 格付け比較表 
評価した結果は、表にします。表にすると全体が良く見えてきます。最も簡単な評価事例を挙げておきます。評価する形式は改善を加えて充実していきましょう。社内の関係者で討議すると新しい取引先の提案なども出てくることもあります。ぜひ活用したいものです。

企  業  名 品 質 コスト  納 期  総 合
A   A   B   A   A
B 株式会社   A   B   B   B
C 株式会社   C   B   C   C

 (2)良い関係構築の施策・活動
取引先として、評価し、もし問題点が確認できれば、相手先にそれを率直に提示し、改善を求めます。問題点については、その内容と解決策を建設的な意見として提案します。取引金額が小さい場合でも、提案内容が正しく建設的であれば、聞き入れてもらえるはずです。評価結果を判断し、お互いに建設的な話し合いができる関係を作りたいものです。
① 経営者、経営幹部との交流
取引先の経営者、経営幹部との素直な意見の交換の機会を持ちたいものです。品質や納期など取引において問題が発生すれば、少なからず顧客に迷惑をかけることになります。経営幹部は、常に企業の経営に配慮し、課題の解決に耳を貸すことが期待されます。まず、経営者同士が相互に意見交換をおこない、課題解決と向上発展を目指した交流は歓迎されるはずです。実際のデータに基づいた意見交換会を定期的に開催するきっかけを作ることに努力したいものです。
経営幹部間の交流ができれば、担当者間の信頼関係が更に向上し、問題解決や苦情処理の解決は更に早める協力体制を強くできます。お互いの企業の経営方針説明会への参加を要請し、品質情報交換会の開催など取引先の品質管理担当者と当方の購買担当者間の定期的交流に結び付けたいものです。
② 担当者間の信頼関係の構築
経営幹部間の交流の機会を持つことが難しければ、担当者間で定期的な交流を持ちましょう。取引する原材料において発生する問題の指摘と改善の要求は品質改善を目指す企業であれば、日常の品質データの交換は喜ばれるはずです。自社における品質問題は、その取引先のほかの相手先でも発生しているはずです。
毎月定期的な情報提供から始めて、毎月の品質会議の開催に結びつく事例もあります。更に発展し、お互いに工場見学や意見交換の形で担当者レベルが率直な交流ができれば、信頼関係の構築と品質向上に結びつきます。担当者同士の個人的な信頼関係の構築できれば、納期の遵守など優先的に行なってくれます。
取引先の担当者は、営業です。基本的には、少しでも多くの商品をできるだけ高い価格で販売したいと考えるのが営業です。大切なお客を失いたくないもと考えています。当方は資材購買担当として少しでも安い価格で購入したいと考えています。お互いの立場を理解し、信頼関係を築き上げ、お互いに長い付き合い(取引)を通して、利益を享受する良い関係にしたいものです。

掲載日:2016/01/12