31  利益を得ることは悪いことではありません

適正利潤は、自然に決まってきます

イグレン 加藤 文男

 1 利益についての考え方
事業経営をして利益を上げることは、悪いことではありません。事業をして、「利益を上げることをあたかも悪いことをしている」という罪悪感を持つことは間違いです。お客様から利益を得ることを悪いことをしていると思ってはいけないのです。経営することは、利益を得ることです。しかし、利益が主な目的になってはいけません。

2 適正利潤について
適正利潤についての決まりはありません。利益については一律に決定することは非常に難しいもので他社との競争状態も勘案して各企業の方針で決めます。
一般的に総原価に利益を付加して販売価格としますが、現実は、市場で受け入れられる価格(販売価格)があり、販売価格から利益をみて目標とする総原価が計算されるのが普通です。順次、総原価に合うように目標製造原価である材料費、労務費、経費が決められます。
企業が方針として適正利潤として、ある数値を決定しても、販売価格が高くなりすぎて目標とする数量を販売できなければ、経営が成り立たなくなります。企業が決めた数値が適正利潤とはいえなくなります。企業がある利益を確保したければ、それを構成する材料費、労務費、経費を工夫して下げなければならないのです。

3 適正な利益は、社会への貢献に対する報酬
企業経営は利益を確保しなければなりませんが利益を得ることが事業活動の目的ではなく社会の人々の生活を高め、豊かにし、文化の向上に貢献することが目的となるでしょう。事業活動をして、べらぼうに大きな報酬を得ることをすれば、事業活動は長続きしません。適正な利益は、社会に対する貢献の度合いを示す尺度ともいえるのです。

4 事業経営することは、社会に対する貢献
事業経営は、ひと、お金、設備などを社会から預かって、これを上手に運用して、社会に役に立つことを目的としています。事業経営をして、利益を上げ、その一部を税金として日本の国に納めます。会社に勤める人は、働くことによって給料をもらって、所得税を納め、住民税を納めます。株式会社であれば、事業経営をすることで法人税を納め、所得税を納めます。これらの税金で道路を作り、橋を作り、社会の秩序が保たれ、運営されるのです。

このシリーズの第三回に近江商人の「三方よし」の考え方を紹介しました。当方の都合だけで購買することでなく、取引先も満足しなければ、長続きしません。売り手の都合だけで商いをするのではなく、買い手が心の底から満足し、さらに商いを通じて地域社会の発展や福利の増進に貢献し、世間の人にも喜んでもらえる「売り手よし、買い手よし、世間よし」という精神です。このように考えると「適正利潤」は自然に決まってくるといえるでしょう。
しかし、いくら適正利潤といっても、取引先の言い分を聞いてばかりでは進歩がありません。どのようにすれば同じ性能と品質を確保した上でもっと安くできるかを研究するコストダウンの考え方を失ってはいけません。新しい技術、新しい工法、新しい原材料を常に探し出し、応用することを忘れないようにしたいものです。

資材購買を担当する人は、利益について正しい考え方を持ちましょう。そして、常に新しいアイディアを提案し、正々堂々いろいろな交渉ができるようになりたいものです。

掲載日:2015/09/25