22 もしあなたが原材料管理担当に配属されたら その2

納品受領から正確な出庫まで

イグレン 加藤 文男

 Ⅰ 納品受領から正確な出庫まで
  原材料管理担当の業務内容と注意することを下記の通りです。

(1)納品受領と検収業務
 納品受領は、原材料を窓口において受領し、検収します。納入された原材料が注文品に間違いないことを確認し、必要に応じて、社内の検査担当者が受け入れ検査を実施することもあります。検査で合格した原材料や検査不要で納入された現物は、納入伝票との数量を確認し、入庫処理します。この段階で管理責任が移行し、企業に債務が発生し、支払いの対象となります。
① 伝票と現物の相違
 伝票と納入品の違い、原材料の不足など欠品情報は、理由の如何を問わず、関連部門へ正しく伝達します。情報が正しく伝達されず、必要な対策が取られないと原材料の出庫時に不足を生じ、製造中断の原因となります。

 納品受領、検収業務において注意することは下記の項目です。
・ 納品は注文書又は、注文データを確認して受領する。注文書のない納品は受領しない
・ 受領時数量の過不足を確認し、不足については直ちに確認し、調達部門へ連絡する
・ 納品伝票のない現品のみの納品は受け付けない
・ 検査対象品の検査結果、不良品情報は関連部門及び取引先に速やかに連絡し、返品処置をする
・ 納入伝票の訂正は行なわない(必要に応じて、調達責任者へ確認をする)
・ 荷姿や梱包方法は指定どおりか確認する
② 納品伝票の修正禁止
 納入伝票の数量の違いは、検収時によく発生します。取引先は、注文書通りに納入したつもりでも実際の数量が異なる場合もあります。検収担当者が気を利かせたつもりで勝手に納入数量に合わせて伝票を修正してはいけません。
 最近、取引先が直接納入するのではなく、運送業者に委託する機会が多いために責任の所在が不明確になります。取引相手先に連絡し、正しい納入伝票の到着を待って検収処理をします。
③ 納入品のみの(伝票なし)検収の禁止
納期間近になり、とりあえず現物のみ先に届けるという便宜手法を取ることがあります。この場合も、担当者が勝手に検収処理をしてはいけません。責任者の了解をえることです。

(2)入庫・保管業務
 棚札に正しく記帳し、入庫します。入庫した原材料は、保管中に紛失、破損や品質の劣化しないように適切に管理する責任があります。正しく保管とは、雨漏りなどにより、劣化させることなく、破損することなく在庫をしておくことです。
 原材料の性質により適切な品質を維持できる期間、保管期限(賞味期限)を厳しく管理することが要求されるものもあります。IC、LSIなど電子部品は、不要な取り扱いで静電気破壊を起こすこともあります。正しい情報を入手し、賞味期限を越える原材料は、性能回復処置、再検査、廃棄処理などの適切な処置方法を提言し、実施します。
 これが適切に実施されないと出庫した時に破損していたり、数量不足があっては製造部門が必要な時に使用できず、生産中断になる恐れがあります。
 設計部門の担当者が材料管理担当者に無断で借用したり、製造部門が現場で発生した品質不良などで勝手に交換処理し、数量不足の原因となることはよくあることです。小規模企業においては、材料管理倉庫への出入りが比較的自由で鍵の管理ができない場合に発生します。材料管理の担当者がいくら真面目に的確に業務を行っても無断借用などの発生でその管理責任だけを追及されることがよくあります。
 
 入庫・保管において次のようなことに注意が必要です。
・ 現品及び仕入伝票の照合
・ 棚札への正しい記録・記入
・ 定められた場所に保管する
・ 先入れ、先出しできるよう配慮し、保管する
・ 品質が維持できる保管状況 (雨漏れ、直射日光の照射の有無、重量物は積み段数等)
・ 無断で持ち出されない管理体制(鍵の保管責任の明確化)

(3)出庫・引渡し業務
 適切な品質で保存管理した原材料は、製造計画や製造部門の要求に従い、適切なタイミングで必要量を供給します。製造部門の生産計画に従い生産活動が円滑にできるように引渡しする際には、製造部門が使用しやすいように配慮します。
 出庫業務は、原材料出庫伝票に基づき行います。出庫伝票は、毎月の生産日程により計画的に出庫するものと出庫依頼の要求される(例えば設計技術部門や製造部門の仕損)ものがあります。生産日程による計画的な出庫はコンピュータにより作成されることが多くなっています。
 生産計画出庫以外の場合、次の生産出庫に支障がないように上司の検印了解と共に契約担当(注文書を発行)及び調達担当(追加発注品の入手)と連携を保持することが大切です。
① 出庫・引渡しにおける注意事項
・ 製造部門の原材料を使用する立場を考慮して配置をする
・ 原材料の現物の違い、数量不足は絶対に避けなければならない
・ 出庫は指定の帳票・伝票により間違いなく行なう
  棚札など記入はミスのないように細心の注意をする
・ 先入れ・先出しを優先する
・ 受領印の確認
・ 良品返品、不良品返品など返庫処理は的確に行い、特に不良品については特別の表示をし、区
  別する
・ 不良品はできるだけ在庫から除外し、指定部門へ返す処置をする
② 先入れ・先出しの意味
 先入れ・先出しとは、先に納入され入庫した原材料から順番に出庫することです。
・ 長期保管の場合、品質の劣化するものがある
  さびの発生、電気電子部品にも賞味期限のあるものも存在する
・ 仕様変更への対応
  従来品の使用終了後に新しい原材料に切り替える場合(自然切替)、従来品を先に出庫する

(4)返品処理
未使用原材料、部品や不良品が製造部門から返却されます。製造部門からの良品返品、不良品返品の処理は、その理由を明確にして検査部門へ良否の判定を依頼します。良品として返却された原材料でも材料管理部門が勝手に判断し、在庫に戻してはいけません。
検査部門にて判定結果により次の処置を行ないます。
① 判定が良品の場合
・返品をしてきた部門へ良品として返却する
・検査部門で良品と判定された未使用の原材料は、棚札に記入し在庫する場所に戻します
② 判定が不良品の場合
・出庫先での破壊・破損
 原因を分析し、再発防止対策を講ずる。契約担当部門へ連絡し、代替品を再出庫する
・材料管理中の不備による破損
 原因を明確にして再発防止対策を取ります。現品は廃棄処理をし、在庫不足の状況を確認し、
 不足の場合は、契約担当部門に追加発注の依頼をします
・取引先の原因による不良品
取引先の原因による不良品はその理由を明確にして返品し、代替品を要求します
(必ず、契約担当に連絡了解を取る)
③ 不良品は、良品と混在しないように適切な表示をしてできるだけ早く、指定された部門へ引き渡します。
契約部門や調達部門の不適切さやミスにより、しかるべき手続きを経て納入されますが必要ない原材料が持ち込まれて、いつの間にか滞留在庫や不適切な在庫として蓄積されることがあります。これらの在庫は経営にとって、無駄な存在です。このような不適切な在庫は、材料管理に残してはいけません。
④ 代替出庫処理
 返品処理の場合、代替出庫があるのが一般的です。所定の伝票により、出庫処理します。在庫品の確認と共に次回生産計画による出庫に支障がないように配慮します。
 契約担当(追加発注)及び調達担当(追加発注品の入手)と連絡を密にし、適切な処置をします。

掲載日:2015/07/23