19 もしあなたが調達担当に配属されたら その4

Ⅱ 問題の解決 3 簡単なQC手法

イグレン 加藤 文男

 簡単なQC手法とその使用方法

 製造工程における品質管理は、作業標準を準備し、その通りの作業を行い、検査をし、その結果を見て適切な処置をすることを繰り返し行なうことです。表現は簡単ですが実行し継続することは忍耐力と根気が必要です。この繰り返しが製造不良を減少させ、バラツキを小さくします。
品質問題は、その多くが簡単なQC手法で整理し、解決することができます。製造工程で仕事をする若い女性社員と問題を整理し、パレート図やヒストグラムを作成し、特性要因図で原因を分析し、一つずつ解決したものです。調達担当者は、取引先に出向いて問題を解決することも必要になってきます。基本的な解決手法である簡単なQC手法は、ぜひマスターしておきたいものです。

(1)グラフ (円グラフ、棒グラフ、折れ線グラフ、帯グラフなど)
 これらはQC手法とまでは言えないと思いますが、新聞や雑誌に多く使用されており、良く見かけます。データはグラフにしてみるとその傾向が良く把握できます。グラフにするだけで問題の解決方法が見つかることもあります。

(2)パレート図
 パレート図とは、重要問題を把握するために層別して、頻度の多い順に棒グラフにして記載し、同時に累積度数の比率を折れ線グラフで記載したものです。パレート図を作成することで問題の大きさの順番が明確になります。また、ある項目が全体の中でどの程度を占めているか知ることができます。
 一度に多くの問題に取り組むことが難しい場合、解決すべき問題の順番を決めるときにたいへん役に立ちます。

(3)特性要因図
 特性要因図とは、問題の因果関係を整理するために、問題の要因を漏れなく抽出し、整理して 関連づけて魚の骨に似た図にしたものです。魚の骨の形をしているので「魚の骨図」とも言います。この特性要因図もどこかで見たことがあるでしょう。
 問題点の原因を整理する際に使います。問題が発生したとき、その原因について関係者が自由に意見を出し合い(ブレーンストーミングといいます)、問題をいくつかに整理し、整理した問題ごとに更にその原因となるものを次々と魚の骨の図のように書き加えていきます。
 大きな骨の部分ごとに真の原因を探し出して、更にその原因となることを記入します。特性要因図ができたところでそれぞれの問題の原因の対策を検討します。特性要因図は、製造部門だけでなく、設計部門や調達購買部門など広く応用できます。

(4)ヒストグラムと分布曲線
 測定したデータをいくつかの区間に分け、その区間に入るデータを度数(棒グラフ)であらわしたものです。長さ、重さ、時間、温度など(この数値をQC用語で計量値といいます)を測定し手得られるデータの分布を棒グラフで表現したものです。これまでにどこかで見たことがあるでしょう。
 ヒストグラムの大体の形を曲線で描いたものを分布曲線といいます。分布曲線にしてみることでデータに含まれた情報を読み、問題を発見できるようになります。

ヒストグラムの使い方
① 特性値の分布状態を直接目で見て判断できるようになります。
② 分布状態から平均値やバラツキの大きさを知ることができます。
③ 規格の範囲を記入することにより、規格との差など余裕などを判断できます。

(5)チェックシート
 取得したデータを整理しやすいようにまた、漏れなく確認できるように設計したシートを言います。といっても難しいものではなく、ある部品に現れる傷の位置をチェックするように部品の図面を直接使用することもあります。仕事を実施したかどうかを確認するために点検項目をきめておき、チェック欄を持つ簡単なものもあります。

(6)管理図・相関図(散布図)
 工程の安定状態や管理状態を把握するために、工程データを折れ線グラフにして、中心線と上方管理限界線、下方管理限界線を記入し、データを取得するごとにこの折れ線グラフ(管理図)に記入したものです。記入したデータの並び方や動きにより、管理された状態から異常状態を見つけ出すことができます。
 要因と要因の関係を把握するために、いくつかの対になったデータの関係を x と y の交点にプロットし、図にしたものを相関図(散布図)といいます。二つのデータの相関関係を読み取ることができます。
 管理図や相関図は、きっちりしたデータの取得が必要です。まず、グラフ、パレート図、特性要因図、ヒストがラムなどを使用した後で研究するとよいでしょう。

(7)問題の原因追及と解決
問題の原因の追究と解決のためにこれらのQC手法の使う手順は次のようになります。
① まず、グラフやパレート図で問題点を把握します。パレート図では、問題の大きさの順番もわ
  かります。
② 問題点について全員でブレーンストーミングを行い、その因果関係を話し合い、特性要因図を
  使って原因(要因)を記載し、さらにその要因の先の要因をというように遡って記入します。
全体で魚の骨の図のようになります。
③ 全体の意見が整理されたところで要因ごとにその対策を検討します。
④ 対策が出たところで実施できるところから対策を順番に取っていきます。

 工程で発生する問題はこの手順を繰り返すことで解決できます。
 それぞれの手法については、多くの図書がありますのでそれぞれ研究してください。これらの手法については、作り方や使い方について、品質管理部門や品質保証部門など専門家に指導していただいてもよいでしょう。

掲載日:2015/07/11