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社長さんへの手紙

小回りが利くということ

〜小回りの利く会社には、技術力と体制と管理能力が必要〜

 中小企業の強みは、「小回りが利くことである」と言われています。
 小回りが利くとは、どのようなことでしょうか。
○ 顧客の要求に柔軟に対応できること
その内容も、
@  日程など無理を聞いて対応できること 
A  仕様や性能など要求の変更に対応できること 
B  コストダウンの要求に対応できること などが含まれ、期待されると思われます。
 ただし、誤解してはいけません。小回りを聞かせても変更に要した費用は正当に要求することができます。柔軟な対応をして、これを無償でやることではありません。
 よくご承知のように小回りが利くということはコストがかかるのです。
 人が動けばコストがかかります。短納期に対応しようとすれば、残業で対応しなければならなくなります。柔軟に変更すれば、不要なものが生じて捨てなければならなくなることもあります。これらはすべてコストにはね返るのです。それまで要した人件費、電力代など光熱費全てコストなのです。これらが全て無駄になることを忘れてはなりません。
 これらに要した費用を御社が負担する必要はないのです。コストはメリットを享受したところが支払うべきなのです。正当に要求すれば良いのです。ただし、自分たちのミスが原因の場合は別です。
 小回りしたことで要した費用、この負担について全て最初から話し合いに入れておくことです。黙っていれば支払ってはくれません。請求がなければ、相手は「うまく言った」と思ってニコニコしてくれるでしょう。相手は変更をすれば費用がかかることは十分承知の上で要求しているのです。
 このように無償で対応する習慣がつくと、あの会社は少々の変更は無償でやってくれるから、「又やらせれば良い」と思います。無償でやってくれることがわかれば、変更を簡単に要求するようになります。
 まずかかった費用は、請求書を出せば良いのです。最初に約束をしていようといなかろうと請求書を出すのです。1回目は「予定していなかったから何とかしてくれ」と多分言ってくるでしょう。そのときは、事情を考慮して回答をします。「しかし、次回からはそうは行きませんよ」と釘をさすことは忘れてはなりません。ただし、その請求金額は理にかなったものでなければなりません。色々な要望に対して、原価計算できる体制を持っておくことです。
 このようなステップを踏めば、次から変更や納期短縮の要求がある時はどのくらいかかるか打診してくるようになります。それでも無理を言ってくるような相手の変更は「無償では受けられない」と穏やかに断らなければなりません。最終的には、支払ってくれないような相手とは取引しないことです。
 このような正しい交渉は、相手との信頼関係を築くことにつながります。問題は、信頼関係がつくれるかどうかです。このような交渉ができなければ、御社の出した見積も信用されていないと考えたほうが良いでしょう。見積価格もいいかげんと思われている恐れもあります。正当に要求しないことでかえって信用を落としているのです。言い換えれば「なめられる」結果になるのです。もし費用を要求して取引が終了するようであれば御社の力量はその程度と知るべきでしょう。御社はそのような会社でないことを示したいものです。
 小回りを利かせた結果、他の取引先にご迷惑をかけるのでは「小回りが利く」とはいえません。小回りの利くと自認する会社には、「スケジュールがどんどん変わってくる」「仕事の内容がどんどん変わる」という現象だけで小回りが利くと思っているところがあります。良い方に変われば問題がないのですが、従業員の都合だけでスケジュールが変わったり、従業員が嫌いな仕事や面倒な仕事を後回しにして、「小回りが利く」と言いつつ安易な方へ流れているところがあります。
 「小回りが利く」企業には、それだけの技術と対応体制と管理能力が必要なのです。本当に小回りが利かせられる会社かどうか真剣に考えたいものです。
2006.6.25
中小企業診断士 加藤文男
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