| 先日手紙を書きました技術伝承の中断についてもう少し詳しく私の経験をお話しましょう。 |
| 技術伝承中断の原因には、大きく分けて技術や技能を持つ個人に起因するものと企業の制度に起因するものがあります。 |
| 個人に起因するものには、第一に「仕事が忙しくなって若い人たちに教えている時間がなくなった」ことです。発注先のコストダウンの要求がとても厳しくなりました。そのために短時間、短納期で製品を完成しなければならなくなったのです。材料費が上昇したことも同じことに結びつきます。 |
| また、二番目に「成果主義」という言葉が使われるようになりました。表面的に仕事の結果を厳しく問われることになったのです。自分自身の仕事の結果が正しく評価されているかどうか疑問ですが、若い人に指導してもそれが正しく評価されないようなのです。これでは、教える時間に自分で成果を挙げたほうがよくなってしまいます。 |
| また、ある人は友人の話としていつリストラされるかもしれないので教える気がしないというのです。三番目の原因でした。若い人が友人と同じことができるようになると高い給料の彼が不要になるのです。これでは会社で「技術伝承に問題」といっても教えるだけ損のような気になります。リストラされては、会社などどのようになろうと関係ないのです。彼の友人は、定年後に中国の会社で働いていますが、中国人は、教えることを喜んでくれるそうです。中国の人たちへ教えたほうが気持ちがよいのです。彼も将来できれば中国へ出かけても良いと考えています。 |
| 昔、と言っても25年ほど前の話ですが、東南アジアや中近東からプロジェクトのためにサービス・メンテナンスする技術者がたくさん日本へ来て多くのことを学んで帰りました。我々は、代表できたのですから日本人は、本当に真剣に教えました。そして、帰国したら彼らの部下となる人にすべてトレーニングするように頼みました。正しくメンテナンスしてもらわないとシステムトラブルの原因となるからです。 |
| しかし、現地のオペレーションに出張して愕然としました。日本に勉強にきたはずの彼らは、「ハイ」と快く返事をして帰りましたが実行してくれなかったのです。渡した資料は他人に見られないようにすべて彼らのロッカーに鍵をかけてしまわれたままで、トレーニングもされていませんでした。 |
| 良く聞いてみると「最もな話」であると理解できました。彼らが指導して技術や技能を他のメンバーに教え込んでしまうと彼ら自身が不要になるのです。同じ能力があれば元気で体力のある人が頼りにされ、高い給料の人は、解雇されてしまうのです。彼らは、中近東のその国で働くために周辺諸国からに出稼ぎ技術者でした。プロジェクト発注先のその国では、サービス・メンテナンスをする優秀な人を募集して採用し、彼らを送り込んできたのです。彼らの心情からすれば当然のことだったのです。人に技術や技能を教えると自分が損をするのです。我々の認識不足でした。 |
| 今、これに近い状況が日本でも起きているのです。本当に考えさせられてしまいます。 |
| 2006.10.14 |
| 中小企業診断士 加藤文男 |